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揺れは段々と収まり、天城は目の前の光景に息を飲む。
「海が……割れている?」
それは比喩ではなく、真の事だった。
神話のモーセの十戒の如く、綺麗に真っ二つに海が割れていたのだ。
「う、うぅん」
天城の下で声がした。
「あっ……」
思い出したように天城が下を見ると押し倒すような形で、志穂が下にいた。
「なんで」
志穂はそう言うと、天城の方を見たまま動こうとはしなかった。
「あぁ悪い……って、どうしたんだ?」
天城は不思議に思った。
海を見ているなら未だしも、それはあり得ない事。
志穂の体制ではどうがんばっても海が見えないからだ。
「俺の顔に何か付いているのか?」
「そんなんじゃない」
目線を追うように、天城も目線を動かす。
「なっ」
瞳に映るのは、亀裂一つ無い綺麗なままの砂像であった。
「あの揺れで、なんで無事なの」
「さぁ、俺の作品に対する愛情が護ったのかもな?」
そう言うと天城は立ち上がる。
「それはそうと志穂、あれは何だか解るか?」
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