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真由美は今になって自分が最初にいた地点から結構遠くまで歩いたことに気が付く。
(夢中で気付かなかった)
彼女は辺りをキョロキョロと見渡すが目当ての人、椎名は見つからない。
「ねえ君」
その時、真由美は警戒の色が露になる。背後から低い声の人から声をかけられたのだから。
「なんでしょう」
怪訝な表情で振り返る真由美。
振り返ると、一人の男がウクレレを持って立っていた。
「もしかして君、迷子?」
その言葉に、頭に血が上った真由美。一言、大きな声で。
「違います」
と言うと、そのまま自分が居るべき所までズンズンと歩いていった。
「ありゃぁー悪い事しちまったな」
去って行く真由美を見ながら、男は申し訳なさそうに呟く。
「陣くん、ナンパとは良い度胸じゃない」
「ひっ、愛美さん」
陣と呼ばれた男は、黒にシアン色のラインが入った競泳水着を着た女性を見てたじろぐ。
愛美と呼ばれた女性の後ろには、闘気のようなオーラが見える。
「もうすぐ、演奏よ。頼まれたことはきちんとして」
「あ、ああ」
愛美に言われ、陣は手に持っていたウクレレを見てハッとした表情に変わった。
「じぁ、行ってきます」
そう言うと陣は、ウクレレを持ったまま、海の家へ向かっていった。
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