祈り届かず

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 トウコちゃんは外へ出ると、すぐそばの草むらへ僕を出した。バトルでもするのかとワクワクしながら彼女を見ると、彼女は心底期待を裏切られた、とでも言いたげな顔で溜め息を吐き出した。 「夢特性でしかも♀だったのに……なんで攻撃がVじゃないのよ。信じられない。どこへでも行きなさいよ」  トウコちゃんは来た時と同じように彼女へ飛び乗った。違うのは、いまは僕が乗っていないこと。  トウコちゃんにとって僕は期待していなかった存在らしい。生まれて来ないほうが良かった存在らしい。僕は悲しくなって、ぼろぼろ泣いてしまった。いっそ死んでしまえれば幸せなのに。ご主人様を失った僕は、無力だ。  数日が経ち、僕は野生ポケモンや子供達に傷つけられて、いまにも息絶えそうな中で初めてトウコちゃんに連れてきてもらった鉄の塊がたくさん走る場所へと来ていた。そこは相変わらず騒々しくて、人間が大好きで大嫌いな僕にはとてもお似合いの場所だった。  僕はいつの間にか眠っていたようだった。傷だらけの体は痛くて辛かったけれど、そんなものは忘れてしまえた。 「ノボリ! ポケモン倒れてる!」 「なんですって!? どなたのポケモンでしょうか?  迷子届けは出ておりましたか?」 「この子まだ1レベル。多分厳選余りで捨てられた」 「……可哀想に、とは言えませんが、手当てだけはしてあげましょう」  どこか遠くで聞こえた言葉がどこか心地好くて、ふわふわ運ばれる僕の体。ぬくぬくと暖かくなる体に、どうしてか涙が出た。  神様、最後に幸せな夢を見させてくれて、ありがとう。  どこにもいないと分かっている神様に、僕は祈りをささげた。 END
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