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「間に合いませんでしたか」
聞こえた声に後ろを振り向く。ノボリは僕の目の前に横たわったニンゲンだったものを見つめて、静かに溜め息を吐き出した。僕はそれにそうだね、と頷いた。
サブウェイでは今日、そこまで珍しくない電車自殺が起きた。スーパーダブルトレインの、丁度三両目が過ぎた当たりで、男性が電車に飛び込んだらしかった。彼を看取ったのは僕だった。どうしてか僕は死を引き寄せやすいらしくて、僕の前ではポケモンや人間がよく死ぬ。それに対して疑問を感じたことは、特に無い。
男性はどうやら苦しまずに死んだらしかった。ジグザグマが線路に入ってきた為に、徐行運転をしていたのだ。だから男性は五体満足で地面に横たわっていられる。こぷ、と最後の吐息と一緒に血を吐き出した男性は人間からニンゲンだったものへと変わった。連絡を受けたノボリがこちらへ向かう少し前に、男性の首は消えてしまった。そこからプカリとデスマスが浮かび上がって、ふわり、ふわりとリゾートデザートのほうへと右に左に傾きながら飛んでいく。
「まにあわなかった」
僕が呟くのと、ノボリが僕に声をかけるのは同時だった。ノボリの隣でノボリのシャンデラが申し訳なさそうに俯いている。ノボリはそんなシャンデラの頭を撫でて、僕を見た。
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