サザンドラと盲目の少女

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 そのサザンドラは怖がりでした。臆病だったのです。彼の三つの顔にある牙は鋭く、人間は勿論、ポケモンですら怖がって寄っては来てくれませんでした。サザンドラはそれが寂しくて、辛かったのです。 ――僕を愛してくれる存在は、いないんだ――  サザンドラはとうとうそう思って自分の巣に潜り込みました。元々気性の荒いサザンドラという種族は群れを作りませんその為、彼はたった一匹で広い広い穴の中に住んでおりました。  ある日、突然騒がしくなった外に気を引かれ、穴からそっと顔を出してみると、一人の少女が同じくらいの年齢の少年達に白い杖を奪われて、歩くこともできないまま立ち尽くしておりました。少年達の少女をからかう言葉からサザンドラは少女が目から光を失ったことを知ったのです。サザンドラは「うるさくて眠ることができない」という理由を作り、その体を動かしました。 「ギャオオオオ!」  サザンドラが少年達を睨み付けて大きく吼えると、少年達は腰を抜かしたり、逃げたり、叫んだりしました。サザンドラは少女の白い杖を奪ったリーダー格の少年の目の前に降り立ち、もう一度「ギャオオ!」と吼えました。サザンドラの光の無い六対の赤い目を見つめられた少年は恐ろしさのあまり失禁して、杖を落として逃げ出しました。それにつられるように少年達はみんな逃げ出し、その場にいるのはサザンドラと少女だけになったのです。  サザンドラは地に降りると少女を傷付けないように自らの尻尾を少女の腕に巻き付けて白杖のほうへと誘導しようとしました。
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