千年の時をこえて

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 千年。  たかが千年。  それでも私の身の回りは段々と変わっていった。  森は開拓され、切り倒され、大きな大きな石の建物が建てられ、大きな音を立てて臭い息を吐き出す鋼のような、変な生き物が固い地面を走り、私の住む森は汚されていった。  やがて百年が過ぎ、ニ百年が過ぎ、人は朽ちて、便利な街へと人々は移り住み、石の建物は植物に蹂躙された。開拓された森はまた生命を得た。  私は美しい雄のキュウコンと恋に落ち、子を生み、育て、夫が死に、砂になっていくのを見つめた。  そうして九百九十九年と三百六十四日が過ぎたその日、私の子供はまだロコンだった。  目を覚ましたジラーチに、私は微笑みかける。  たくさん話をしましょう。  話すことがたくさんあるの。あなたが眠っていた間に、たくさんのことがあったのよ。  そして、大丈夫。あなたはもう一人じゃない。私の子孫が生まれ、あなたとまたお友達になるわ。  だけどジラーチ、いまは千年前の私達に戻って、たくさんの話をしましょう。  たくさん話すことがあるの。  たくさんたくさんあるの。  だけどまずは言わせてちょうだい。 「おはよう、ジラーチ」 「おはよう、キュウコンちゃん」  またここから、千年と七日のお友達を始めましょう。 END
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