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「主がこれから転生する世界は、技術が発達していない代わりに、魔法というものが存在している国じゃ」
「へー」
どうしよう、目の前にいるおっさんが色々危なすぎて会話したくない。
「ん?なんじゃ、思ったより反応が薄いの」
「用は転生すればいいんだろ?」
「うむ、飲み込みが早くて助かるの」
この二人、話が噛み合わないどころかまともな会話にすらなっていない。
つまるところ、康介が危ないおっさん(康介視点)と会話するのを放棄したからだが。
「ところで主、何か自分の体について願いなどはないか?」
「願い?」
「うむ、例えば世界最強の肉体でも、最も良質な魔力でも、なんでもよいのじゃぞ」
話を聞けば聞くほど危ないなこのおっさん、精神科にでもいってきた方がいいんじゃないのか?
最強の肉体云々は正直いらない、それは『他人』のものであって自分のものじゃない。
努力もなしに何かを手に入れるなんて俺は嫌だ。
努力をして、結果がついてくる、当たり前の摂理だ、
そんなことも分からなくなっちまったら、それは人としておしまいだと俺は思う。
だから俺はそんなものいらな――あ、そうだ、
「……努力すればするほど強くなる肉体が欲しい、上限のないやつな」
「ほう、主は最初から最強とは言わないのじゃな」
「俺は努力もしないで手に入れたものなんざいらない」
「分かった、もうよいな」
「ああ」
「ふむ、では、二度目の人生を楽しんでくるのじゃぞ」
じいさんがそう言った瞬間、俺の足元に穴が空いた。
もちろん、俺は重力に従って落ちていく、
……そういえば今更ながらさ、
あのじいさんって誰なんだ?
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