僕。

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外は肌寒く、冷たい風が吹いていた。 「もう・・・冬かぁ。」 鞄の中に入れていた赤いマフラーを出して僕は首に巻いた。 僕が通っている高校は僕の家から歩いて約30分位で着く。 僕の前を僕と同じ黒い制服を着て自転車に乗って登校する人達が通り過ぎていく 「…自転車」 自転車にも、あまりいい思いではないな・・。 何故なら、何でもすぐに出来てしまう兄に比べ、僕は長い時間を掛けないと出来なかった。 自転車の練習の時だってそうだった・・・ すぐに兄は自転車に乗れるようになったが、僕は自転車から落ちたり転けたりとなかなか自転車に乗れなかった。 そんな僕を見ていた兄は僕に 「ホラ、仕方ないなぁ~俺が教えてやるから頑張ろうぜっ」 ‥と、僕に優しく手を差しのべてくれた それに対して僕は、 「お兄ちゃんに教えてもらわなくても僕は一人で乗れる!!」 兄が差しのべてくれた手を払いのけて自分の自転車に乗ってまた練習を始めた。 兄は僕を思ってあんなに優しい言葉を言ったつもりだろうが、その時の僕には嫌味にしか聞こえなかったのだ。 僕はいつも何でも出来る兄が羨ましかった。 「・・・結局、最後は兄さんに教えて貰ったんだよなぁ」 ボソッと小声で言った。 幼い頃の自分を思い出しているうちに学校に着いていた。
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