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「それにしても……珍しいね。」
「…なにが?」
「その、裕人が早起きするなんて……。やっぱり例の……あれ?」
文の始めの省略された部分には、――裕人にしては――という一文が入ることに気づき、俺は苦笑いを浮かべた。
心配するような声色で言った明日香は同時に同情にも似た視線を向けてくる。だが、コイツなりに気を使ってくれていることは分かる。
俺は変に気負わせたりしないために、いつもと変わらない様子で気さくに振る舞った。
「………ああ。今日はまたあの夢を見てさ。つい、ビックリして跳ね起きちゃったよー。毎回毎回慣れないもんだなー。」
毎回同じ表情を浮かべる俺を明日香は数秒見つめたあと――、
「そっか。」と一言つぶやき、――会話を切った――。
あの日以降、夢を見るようになった。
見るどころか考えただけでも吐き気がする。――悍ましいあの光景―――。
俺の、――俺の親友は教室で、みんなの見てる目の前で殺された。
いや、それは正しくない。正しくは――、消滅した。
赤い鮮血を飛び散らせたあと、光る粒子となって――。
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