緑の世界

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そして会話の流れから、“騎士”というのが芹にとってあまり良くない存在なのだと感じとった。 「……あの。……信じてもらえないかもしれないけど、私、この世界の人間じゃないんです」 これからどうなるのか、と恐ろしくなった芹は、危険な賭けに出た。 信じてもらえたら、助けを期待できるかもしれない。 けれど。 信じてもらえなければ、どんな酷い目にあうか分からない。 それでも、何も伝えないまま自分の行く末を決められるよりマシだった。 「は?」 「あ?」 2人揃って目を剥き、口を半開きにして芹を見つめてくる。 「……信じられないだろうけど、本当なんです。 私は楠本 芹という名前で、こことは別の世界の、日本という国に住んでる…住んでいた、歴とした人間です」 言い切って、目を閉じた。 どんな反応を返されるのか……それが良くないものだった場合、目にするのを少しでも遅らせたいという、ささやかな反抗だった。 そのため、芹の話を聞いた2人が、慌ててひざまずいた瞬間を見ることはなかった。
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