緑の世界

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「……いや、違うと思いますよ?」 平々凡々な女子高生の芹としては、そんな突拍子もないことを言われても否定するしかない。 「いいえ。建国以来、貴女様のような方が現れたことは、未だかつてありません」 「……そんなこと言われても、私は何の力も持ってない、ただの女です」 「まずは村長の元に参りましょう」 精一杯訴えてみた芹だったが、おじさん(オレンジ)は聞く耳を持たず。 踵を返して先導を始めてしまった。 ここでこれ以上の弁解は難しいと感じた芹は、諦めておじさんについて行くことにした。 前におじさん(オレンジ)。 後ろにもおじさん(黄色)。 2人のおじさんに挟まれて、カウレ村を歩く芹。 (……さっきは気付かなかったけど、ここは凄く自然が豊かだ) 緑の少ない町しか知らない芹にとって、この村は――きっと国全体も――憧れの地と言っても過言ではないほど、自然豊かで緑に溢れている。 (地球と同じで良かった……) 空や雲はヘンだが、土や植物は芹の知る色だった。 そのことに、ひどく安堵する芹。 今歩いている村の歩道は両側に柵があり、右側の柵の向こうには一面に畑が拡がっている。 左側には鬱蒼とした森があり、見たこともない大きな木が、いくつも天に向かって伸びている。
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