緑の世界

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木々や花、自然が大好きな芹には堪らない、楽園のような場所だ。 若干、ヘンなところもあるが。……おもに、頭上と前後。 きょろきょろと落ち着きなく歩く芹は、ふと視線を感じて足を止めた。 家々の扉や窓、畑の向こうから、いくつもの瞳が芹を見ていた。 それに怯えるでもなく、ひとつひとつを冷静に見返していた芹は、ここであることに気付いた。 ――芹を見つめていた人達の中には、芹と同じ様な純粋な人間の姿が、ひとつもないことに。 髪の毛や瞳はおじさん達同様カラフルで、芹が知っているクレヨンの全色が揃っている。 おじさん(黄色)のように翼がある人。 犬や猫のような耳と尻尾が生えている人。 何の動物か分からない耳や尻尾や角が生えている人。 羽根も耳も尻尾も角もない、ごく普通の人間に見えていたおじさん(オレンジ)も、…よくよく見れば瞳の虹彩が縦になっている、いわゆる猫目だった。 服装はおじさん達と同じようなものばかり。 これがここの一般的な服なんだろう。 男性はチュニック型のシャツに、細身のズボン。 幅広のベルトを締め、足元は膝下までのブーツ。 女性も男性と似たチュニックだが、その丈は長く、ワンピースのような着方をしている。 ベルトとブーツは同様。 そして一様に長い髪は編み込まれ、毛先にビーズのような飾りがつけてある。
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