緑の世界

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もう諦めたのか、敬語はそのままだったが、先程よりは格段に緩い雰囲気で会話を続けてくれた。 村長の家に着くまでに分かったこと。 黄色い髪のおじさんの名前は、カジ。 オレンジの髪のおじさんは、ヒューズ。 ひそかに気になっていた、普通の人間に見えるヒューズは、蛇の特徴を持っている蛇人だった。 服に隠れていて見えないが、腕や足に鱗があるらしい。 翼を持つ翼人。 動物の特徴を持つ獣人。 魚の特徴を持つ魚人。 猫でも犬でも羊でも、動物の特徴を持つ人はひとくくりに獣人と呼ばれ、鳥の羽根でも蝙蝠のような皮膜の翼でも、空を飛べるものは翼人と呼ばれる。 ヒューズのようにどれにも属さない特徴を持つ人は稀で、数も少ないらしい。 そして、芹のような純粋な人間は存在しない。 こちらの世界には1つの大陸しかなく、そこに大小あわせて6つの国がある。 今芹が居るこのナリア国は、その中でも一番大きな国らしい。 国々の間に争いはなく、それぞれの国の特産品等を輸出入し合い、助け合って暮らしている。 ただ、それはここ数十年のことで、過去には国の土地を巡って争っていたこともあった。 文明は地球よりも遥かに劣る。 そもそも、この世界には科学というものがないらしい。 それならば、と異世界にありがちな魔法の有無を芹が訊ねたが、首を傾げられる結果に終わった。 人々は畑を耕し、猟や漁をして、慎ましい自給自足の生活をしている。
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