緑の世界

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民の間に階級はないが、国には王が居て、王族が居る。 6つの国に、6人の王。 どの国も同じで、王が国を治め、王族は王の補佐をする。 国には都市――街というものはなく、幾つもの村がある。 村を村長が治め、月に一度王の元へ集って、各地の状況を知らせる会議のようなことが行われる。 民が健やかに暮らせているかを、王へと報告するのだ。 ――と、ここまで聞いた時、ちょうど良く村長の家に到着した。 「おーい、ダン。居るかー?」 ノックもせずにドアを開けたカジが、奥に向かって声をかける。 村長の名前はダンというらしい。 「だー!ノックぐらいしろよ! いっつも言ってんだろうが!」 カジの倍以上は大きな声とともに、部屋の奥から1人の男性が姿を現した。 「おお、わりぃな」 反省のかけらもないカジは、きっと常習者なんだろう。 2人の会話…というよりダンの大声に呆気にとられていた芹の横で、ヒューズが溜め息をついた。 「……おい。そろそろいいか」 「んあ?ヒューズも居たのか。 ――何かあったのか?」 「……伝承の乙女が現れた」 「は?」 「異世界から来るという、伝承にある“緑の乙女”だ」 言いつつ、目線で芹を指す。 ヒューズの目線が動くのにつられて、ダンの視線が芹を捉えた。
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