緑の世界

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「……この娘がか?」 「そうだ。セリ様とおっしゃる」 ダンと芹の目が合う。 「……はじめまして。楠本 芹といいます」 黙っているのもなんだと思った芹は、取り敢えず名乗った。 「……本当に異世界から来たのか?」 ダンはカジとヒューズのようにあっさりと信じることなく、目を細めて問いかけてきた。 そんなダンの反応に、芹は安堵した。 「これが普通の反応ですよね。 さすが村長さん」 「あ?」 「いえ。何でも。 私は本当に異世界から来ました」 「証拠は?」 間髪入れずに問うてくるダンに、ヒューズさんが自身の見解を語る。 「この方は嘘をついていないと思う。 ――まず、ここがどこなのか知らなかった。 名前も、ここでは聞いたことのないものだ。 カジの羽根を見て驚いていたし、……あと、空を見て驚いてもいたな」 つらつらと語っていくヒューズに黙って耳を傾けていたダンが、ここで初めて言葉を挟んできた。 「は?空?」 言いつつ、芹を見てくる。 「……はい。私が居た世界では、空は青くて雲は白かったので」 「……羽根に驚いたってことは、あんたの居た所には翼人はいないのか?」 そう訊いてくるダンの頭には、羊のものっぽい立派な渦巻き角が生えている。 「翼人どころか、獣耳や尻尾がある人もいません」
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