緑の世界

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「それまでは好きにしてていい。 ……ただし、俺の目の届くところに居てもらうぞ」 「はい」 「セリ様……」 カジが眉を下げて呟き、ヒューズも沈んだ表情で見てくる。 2人とも、芹を案じてくれているようだ。 2人の気持ちは嬉しいが…… ――王に会いに城に行く。 そこは芹も予想していたし、覚悟もしていた。 いきなり湧いて出て、「異世界から来た」などと言う怪しい人間を野放しにしてくれる訳がないことは、少し考えれば分かる。 ただ、飛ばされた場所がこの国だったことは多分、芹にとって幸運だったんだろう。 カジやヒューズのように、案じてくれる人達に会えた。 自分の預かり知らぬところで異世界に飛ばされてしまっていたことを踏まえれば、不幸中の幸いというのが妥当かもしれないが……。 とにかく、芹の今後の身の振り方は、この国の王によって決まる。 もと居た世界に帰るすべがあるかもしれないし、そんなものは無いかもしれない。 もし、この世界で生涯過ごさねばならない場合、どうやって生きていけばいいのか。 人種の違う芹を、この国の人々は受け入れてくれるのか? 生きていくには職を得なければならないが、芹のような何の知識もない少女に、できる仕事はあるのか? そもそも、そんな自由が与えられるのだろうか? ……最悪、城で拘束されるかもしれない。 不安の種は次々芽吹く。 考え出せば切りがないため、芹はマイナスに傾いていく思考を閉じ、ティータイムを楽しむことにした。
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