緑の世界

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「私は人間です」 まさかこんな台詞を真面目に言う日が訪れるとは。 このまま泣いてしまいたくなった芹だったが、数ある疑問に答えてくれそうなこの2人に、まずは色々と訊かねばならない。 と思いなおし、 「あの、ここはどこですか?」 「あ?お前、この国の者じゃねぇのか? ――ああ、だからそんなおかしな服着てんだな」 勇気を出して訊ねてみたものの、服装全否定という結果に。 「これは制服で…いえ、何でも。 それより、ここは?」 「ここはナリア国のカウレ村だ」 二度目の質問におじさん(黄色)が答えてくれて、教えられた地名でここが地球ではないと確信できた。 「……そんなことも知らないで、どうやってここまで来たんだ?」 おじさん(オレンジ)の鋭い質問に、芹はどう答えたものか、と悩む。 ここで『別の世界から来た』と言って、信じてくれる人がはたして存在するだろうか? しかし、適当に誤魔化そうにも芹はこの世界の地名を知らない。 答えられずに黙る芹に、おじさん(オレンジ)がきつい眼差しを向ける。 「……やっぱり怪しいな。 こいつは騎士につき出したほうが良くないか?」 「いやいや、お前。 こんな娘さんにそんなこと…」 どうやらおじさん(黄色)は人が良いらしい。 おじさん(オレンジ)の話す“騎士”が何なのか分からない芹だったが、おじさん(黄色)が庇ってくれようとしているのは理解できた。
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