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麗が自己紹介を終えると、盛大な拍手と歓声が彼女に贈られた。
麗さんと言えば、その竹を割ったような性格と劇団員のような整った顔つきが他の教師とは一線を画し、新聞部より公募した『人気教師ランキング』ではぶっちぎりの一位を獲得する程の人物だ。
大袈裟とも言えるこの生徒らの反応も、同じクラスになれたとあればある意味当然と言える。
麗「盛大な歓迎を嬉しく思うよ。…さて、初日の今日は授業もないし、この時間は自己紹介でもしてもらおうか」
知った顔も少ないしな。
そう付け加え、麗は簡単な自己紹介をするよう促す。
その指示に従い、端から順次生徒らの自己紹介が始まる。
真面目に自己紹介する者。
おふざけを加えながら自分をアピールする者。
各々が思い思いの紹介をする中
その生徒は、取り分け個性的な自己紹介で一同の注目を浴びた。
千「…藤宮千歳(ふじみやちとせ)です」
席を立ち、一言そう小さく言い、再び座る。
それは、たった三秒の自己紹介だった。
麗「あ~…藤宮?」
その消え入りそうなか細い声に、麗は思わず疑問符を付けて聞き返した。
千「…はい」
麗「もう少し何かないのか?趣味とか、好きな教科とか…」
千「……無いです」
麗「そ、そうか」
千歳の反応は、最早質問されることを全面的に拒否している。
そう感じた麗は、それ以上何も聞くことはなかった。
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