釜中之魚

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   暗闇の中に立っていた彼は、私と同じ学校の学ランを着ていて、何ていうか冷めた目でこっちを見つめていました。  名前までは分かりませんが確か……隣のクラスの人だったと思います。  立ち止まっている彼の横を通り過ぎようとした時、不意に彼は口を開きました。 「お前、魚臭いな……」  一瞬、時間が止まったかのような気がしました。 「ふえっ?」  ほぼ初対面の相手からの突然の宣言。  呆気にとられ間抜けな声を洩らした私に彼は追い打ちをかけました。 「やっぱり、魚臭い。お前、大丈夫か?」  さすがの私もここまで言われて黙ってられません。 「魚臭いって、失礼です。私はちゃんと歯を磨いているし、お風呂にも入ってます。 それに、なんであなたにそんなこと心配されないといけないんですか?」  自分でも分かるくらい顔を真っ赤にして反撃しましたが、彼は完全に無視して、続けました。 「かなり危険だな……で、誰が死にそうなんだ?」 「えっ?」 「お前の周りで死にそうな人間がいるんだろ。 助けてやるよ」  ……助けてやる?
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