4278人が本棚に入れています
本棚に追加
「寒い」
ヒロムの家から出た瞬間、肩がすくんで思わず呟いてしまった。
十月の夜空は、ちょっぴり切なくさせる。
木々の色が変わって葉を落としてるからかな。ヒロムの家の庭にあるもみじみたいな木の葉が赤くなってた。
そのすぐ後ろにあるみたいに、満月はキラキラ輝く。だって、あたしでさえ照らしてるし。あそこの隣に並べたら眩しくて目を開けれないかも。
なんかさっきまで抱き合ってたのに、人恋しくなるな。
寒さは人を切なくさせるのに持って来いな冬の産物。
秋が傾いてるんだなと同時に思った。
さっきまで、本能の赴くままな行為を行っていたというのに、そのせいでセンチメンタルな気分になってしまった。
停めておいたシルバーの自転車の施錠を外した。なんとなく、ヒロムのニ階の部屋を見ると、カーテンの隙間から光が漏れた。
「今日、十五夜か」
ヒロムの瞳を思い出して、そんなことに気がついた。
最初のコメントを投稿しよう!