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「姉ちゃんはさ……好きな人とかおんの?」
小学生の妹と畑でキュウリを取っていたら突然尋ねられた。
「この時代に好きな人も何もあるかい。うちは家族が無事ならそれでえぇんや」
「えー、ほな大和兄ちゃんはどうなん?」
「大和はただの友だちや」
私と大和は小学校で勉強も運動も一位二位を争う存在だった。
「おい、百合!今回はオレの勝ちやな!」
「うっさいわ!」
私の苦手な漢字の書き取りが大和は得意で、いつも満点の解答を眩しいくらいの笑顔で私にみせてきた。
「えぇよな。大和は書き取りができて」
「やけどおれは百合より字汚いって先生に怒られとるで。なぁ百合、何か歌ってや」
「自分で歌えば?」
「オレは音痴やからあかんって母ちゃんに笑われるから嫌やわ」
私は先生のオルガンに合わせて歌うのが大好きだった。
だけど大和はそれが苦手でいつも級友の笑い者になっていた。
本人も楽観的だからふざけた歌を歌って周りを笑らわせていたけど、私は大和の歌も笑顔も好きだった。
いちばんぼしみーつけた
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