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「ちょ、ちょっと?! なら暖めてくれって……な、何言ってるんですか!」
そう言いつつも、美鈴はあなたを振りほどこうとはしない。
「別に……嫌って訳じゃ無いんですよ? それでも少し急過ぎます! も、もう……こんなに震えて、やっぱり寒いんでしょう?」
あなたは、あはは、とごまかし笑いをする。あなたが震えているのは、寒いからか、緊張しているからかは定かではない。
美鈴はため息をつくと、あなたから少し離れて言う。
「……わかりました。仕方ありません、私が暖めてあげます。ちょ、ちょっとそんなに嬉しそうな顔しないでください! 暖めるといっても、抱きしめあうって言う意味じゃありませんからね!」
そう言うと美鈴は首に巻いたマフラーを解き、その片端をあなたに差し出した。
「ふ、二人ですれば、暖かいでしょう?」
目線を反らしながら言う美鈴の愛らしさにあなたは思わず頬を緩める。
「何にやけてるんですか……まったくもう、しょうがない人ですね」
雪がちらほらと降る中で、美鈴とあなたは紅魔館の門の前に腰掛ける。
傘の下でケーキを開ける。申し訳程度のろうそくを立て、その小さな頭に火を灯す。雪の中、ゆらゆらと揺れる可愛らしい火を見て、二人は顔を見合わせ微笑み合う。
二人きりのささやかな、そして幸せなクリスマスイブの夜が始まった。
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