壱幕

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「…う~、大丈夫?詩花(うた)」 「うん、大丈夫。あんまり濡れてない。 彩花(いろは)お姉ちゃんは?」 「ん~、そこそこ大丈夫。」 二人は軒先で腕や髪、服についた水滴を 払い落としながら、大丈夫かと聞き合う。 「…ごめんね?詩花。 詩花の言う通り、あのまま散歩して 帰っていれば、こんな事には…。」 「気にしなくていいよ、お姉ちゃん。 実は私も秘密基地行くの楽しみにしてた …きゃあ!!」 「詩花!?」 彩花が少し沈んだ様子で謝っていると、 急に詩花が悲鳴を上げる。 下を向いて地面を見ていた彩花は驚いて 顔を上げ、横にいる詩花の方へと向くと、 「…ぇ?」 「…扉が、開いたの…。」 詩花の背後にあった引き戸が開いている。 僅かに中を覗ける程度ではあるが、 閉まっていた筈の戸が開いているのだ。 …もしかしたら、中に誰かいるのかも… 全く同じ事を考えてた二人は、 同じタイミングで、それぞれ姉、妹を見る。 顔を見合わせた二人は同じ考えだと悟ると、 小さく頷き、引き戸の持ち手に手をかける。 .
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