壱幕

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ぴたり と、突然戸を叩く音が一斉に止まる。 「…。」 辺りがしんと静まり返り、すきまから風が 抜ける音だけとなった。 …一体、今のは何だったのか? そんな疑問が頭を過る。 「…お姉ちゃん!!」 「…!」 詩花が叫ぶ。 驚き振り向いた彩花は、詩花が見ていた 床を咄嗟に見てしまった。 「…ひっ!!」 …そこには、仄かな灯りの中でさえ判る程に 赤く、無数の人の足跡が、引き戸へと 向かって行き、戸の前で集まっていた。 「…。」 …ここにいては危ない。 ここにいては…!! 頭の中で警鐘が鳴る。 本能が危険だと訴えてくる。 パニック寸前の二人は、なんとかこの場から 立ち去る選択をし、一目散に駆け出した。 屋敷の奥へ、奥へと…。 .
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