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ギシギシギシギシ
古い床板が軋む音に合わせて聞こえる
走る音と、喘ぐ声が二つ。
暗い廊下の先を僅かに照らす提灯の灯りが、
唯一の灯りとなっていた。
「あ」
ぐん、と提灯を持っていた姉の手が引かれ、
足を止めた。
「詩花(うた)?!」
振り返ると、手を握っていた妹が
床に踞っており、立ち上がる所だった。
「ごめん、彩花(いろは)お姉ちゃん。
足がもつれたみたいで…。」
申し訳なさそうに俯く詩花に、彩花は
首を横に振り、
「謝らなくても大丈夫だよ、詩花。
それに、ここまでくれば大丈夫だろうし。」
詩花に笑いかけながら、そう言って慰める。
「…うん、そう…だね?
ありがとう、お姉ちゃん。」
ほんの少しだけだが笑顔を見れた事で、
彩花もひと安心する。
「…よし!
じゃあ、早くここから出られる所を…。」
…トン!
再び歩き出そうとした時、上から、
何かが落ちる音がした。
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