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「お姉ちゃん、ケータイ!」
「…あ!」
詩花の指摘で、ようやく音源を突き止めた。
彩花の黒いワンピースのポケットの中にある
ケータイ電話だ。
時間を知る為に、と彩花は持ち出していた。
彩花はケータイを取り出し、パカリと
二つ折りのケータイを開く。
光る画面には非通知と表示されており、
着信が未だに続いている事を示していた。
二人は非通知設定されているのに
疑問を覚えたが、もしかしたら母親が
帰らぬ二人を心配して電話してきたのかと
期待して、通話ボタンを押す。
「もしもしお母さん!?」
叫ぶように彩花がマイクに向かって言う。
詩花は渡された提灯をケータイに向けて、
彩花が見やすいように配慮していた。
「お母さん助けて!!
私たち、変なお屋敷から出られなくて…!!
ねぇ、お母さん!!!聞こえてるの!?」
しかし母は一行に声を発しない。
彩花の叫びはどんどん大きくなっていき、
キンと耳を劈く。
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