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「あの…。」
お礼を言おうとしたその時、
「…早く…早く…。」
初めて、女性は声を発する。
そして二人の頭上を指差した。
二人は同時に顔を上へと向ける。
そこには神棚が釣ってあった。
彩花の位置からは何も見えないが、
詩花には何があるのかが見えたようで、
「…なにか、あるよ?」
そう言った詩花はつま先立ちをして、
神棚に手を伸ばす。
カタン!
「…ぁ」
詩花の手が触れてバランスが崩れたのか、
神棚から何かが落ちてきた。
「っ!」
咄嗟に彩花がそれをキャッチし、
何とか壊れずに済んだ。
彩花は両手に納まったソレを見る。
「…鏡?」
それは半円型の鏡で、しかし白く曇り、
姿を写し出すのは叶わずにいる。
「お姉ちゃん、それ何?」
「多分…鏡だと思う。曇ってるけど…。」
これが何だと言うのだ?と疑問に思うが、
例の如く、問おうとした時には
もう、女性の姿は無かった。
…あの人…どこかで…。
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