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二人は、女性が消えて幾分か広くなった
この畳の部屋を見渡す。
部屋はどうやら四角ではないようで、
途中から緩やかに湾曲している。
丁度、彩花(いろは)が持っている
鏡の様な形になっていると予想出来る。
周りにある障子戸はぴっちりと閉まり、
丸窓の和紙によって緩んだ光は、
淡く、部屋の中を照らし出している。
まるで、月光が部屋に差し込むように
淡く、儚い、光…。
縄で囲まれたこの部屋を、より一層
幻想的に演出していた。
「…ねぇ、詩花(うた)?
ここ、なんか他の部屋と違うね??」
「…うん。」
二人はゆったりと立ち上がり、あちこちを
触って確かめ始める。
縄には寺や神社でよく見る白い紙…
紙垂(しで)が何十枚と垂れている。
…まるで、結界のようだ…。
彩花がそう思いながら縄に手を伸ばした時、
バサバサバサ…!
「きゃあ!」
何かの冊子が数本落ちる音と、詩花の
小さな悲鳴が聞こえた。
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