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彩花が音のした方を向くと、さっきの
神棚の近くに踞る詩花と、紐で綴じられた
本が数本、散乱している光景が目に入った。
「詩花!大丈夫??」
「うん、大丈夫。
神棚にまだ何かあるから取ろうと思って…。
う~、もっと背が高くなりたいよ…!」
こんな訳の判らない状況でもそんな事を
言える詩花。
心配性な割に不思議な発言をする妹に
彩花は多少ヤキモキする事もあるが、
今は何故だか安心する。
非現実の中の、唯一の、日常…だから…?
「お姉ちゃん?」
「…ぁ、ごめん。何だっけ??」
「…大丈夫?
さっきから何か様子が変だよ?」
「…うん、大丈夫。大丈夫だから…。」
心配させまいと微かに笑顔を見せる彩花。
詩花の不安は募るばかりだが、姉の
そんな顔を見たら、何も言えないだろう。
眉を顰めたまま、詩花は散乱した本の中から
一冊、手に取る。
藍色の表紙には丸い月らしきものが
描かれている、題名のない本を…。
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