彫刻家~ 処女作にかえれ~

5/55
前へ
/55ページ
次へ
ゆず どんぐりぼうしのお椀にお汁粉いれて ガラスのおはじき綺麗なおさら ゆずの実刻みのせましょう おざぶとん、小菊のお花しいたなら 誰か遊びにこないかしらと 冬里の小さな民家の庭で幼子ひとり お膳に松葉のはしをそろえます 待ちぼうけに雪がつらつきはじめたころ こころづくしに誘われたか 雪にまたがった一寸法師が 幼子のいる庭めがけておりたちました 「やぁ、やぁ、素敵なごちそうだ」 思いがけないお客人に手ばなしでよろこんだ幼子は さぁどうぞと笹の葉のお茶を用意して せっせっと雪のお餅をつきはじめました 一寸法師は次から次へとお餅をたいらげて ゆずのおしんこもうまいなぁ、と笑いながら ゆっくり庭をみわたして 小雪にはゆずが似合って綺麗だなぁといいました 幼子もゆずや椿といっしょに庭にたち 小さな声でわたしも小雪というのです とつぶやきました 一寸法師の帰った庭で 作 夏休み
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加