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「あぁ、散々な目にあった」
「お疲れ様です桜さん」
「いやいやごめんね2人とも。付き合わせちゃってー」
「心にも無いことは言わんほうが良いぞ文」
心のこもった労いの言葉と、心こもらぬ労いの言葉を聞いてそれぞれ返す。
此処は天狗詰所。
妖怪の山の微妙な所に建設された天狗の施設である。
詰所とは言っても、建設当時よりも著しく規模が拡大し、今では様々な部署があったり、小さいが娯楽施設まであったりする、詰所とは名ばかりの天狗基地妖怪の山本部である。
昔の名残で大抵の天狗は詰所と呼んでいる。
「ほいじゃ私は仕事行きますねー」
「「いってらー」」
椛は別の仕事が入っているらしく、疲れなどないように軽々退室した。
「天狗が折角労いの言葉をかけてあげてるのに酷いわねぇ桜」
その言葉にどれだけ気持ちがこもっているのか超疑問である。
「はいはいどーも。んで、撮れたのか?」
「バッチシ」
そう言って文は手元のカメラを私に見せる。
そこには標的を絶妙なアングルで撮影した写真の数々があった。素人目から見ても美しい。
「ほう……私と椛を囮に使っただけあって上手く撮ったな」
「まあ標的が標的だしね。囮とかあんまし使いたくはなかったけど」
「嘘をつけ嘘を」
むしろ今まで囮作戦を使わなかったことが不思議でたまらない。
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