甘いのはお好き?

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 住宅街、あるアパートの地下にて営業する、小さな紅茶専門喫茶店。大介がこの店を見付けたのは、全くの偶然であったのだが、大介にとっては恥ずかしいやら情けないやら……と、今となっては赤面もので、とにかくそれは過去に遡(さかのぼ)る。  その日、職場の人たちとの飲み会があり、大介はいつになく酒に飲まれた。原因は後日追究しなかったので未だに謎のままだが、職場の飲み会では先輩などからよく、飲めと勧められるので、その時もきっとそうだったのだろうと、勝手に思っている。  いつになく酔っ払った大介は、飲み屋の前で解散した後、一人で帰路についた。  いつもの路線の電車に乗り、時々襲ってくる睡魔に意識を持っていかれながらも、なんとか最寄り駅に降り立った――つもりだった。実際は、一つ手前の駅で降りてしまったのだが、朦朧としている状態で気付くこともなく、本能(?)のままに大介はその土地を自宅へ向けてさ迷い始める。  もうそろそろ家だろう、とか。ここはどこだ、とか。何一つ疑問に思うことなく、ただ大介は歩き続けた。  そうして、どのくらい歩いたのか見当もつかなかったが、路地を曲がった時、大介はそれと出会った。
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