甘いのはお好き?

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 時刻はとっぷりと更けた深夜。住宅街であたりは静まり返っている。  そんな中、先に見えるオレンジの明かりが一つ。  大介は足早に、虫が光に吸い寄せられるかのごとく、それに近付いた。 「……“Tea”……」  オレンジの光は、イーゼルの文字を照らしていた。  “Tea”……紅茶。  それは、大介が何よりも愛する好物だった。 ※  「営業時間が時間ですし。イーゼルに出している情報以外、何も出していませんから。たまにスナックか何か、お酒を召し上がる所と勘違いされて来店してしまう方がいらっしゃったりするのですが……。  酔われたうえで来店され、“美味しい紅茶を下さい”と、紅茶喫茶店として認識、ご注文されたお客様は、あとにも先にも浅田様だけです」  だから、本当に嬉しかったのですと、オーナーは笑みを漏らした。 「恥ずかしい話です……」  大介は思わず下を向く。  あの時飲んだ紅茶は、酔いを吹き飛ばすぐらいに、目を見張る美味しさだった。  大介は紅茶や甘いものが大好きで、休日はよく一人でティールームやカフェに通っては、美味しさに癒されていた。
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