始まりは大体桜の季節から。

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僕の不敗神話が崩れた。 といったら言い過ぎかもしれない。そもそもこれが勝負事であるのかもあやふや。 僕の名前は愛川織。 織の名前の由来は、知らないがそんなことは良い。 特筆すべきは名字だ。 あいかわ。 僕はこれまで出席番号1番を他の連中に譲ったことがない。 例え相原だろうが赤井だろうが、だ。        * 入学式なう。 僕は今日から高校生だ。 体育館に案内された後は各々与えられた席に鎮座し、開式を待つというものらしい。 席順は前からあいうえお順で、慣れていることだ、僕は特に何を考えるでもなく最前列に向かった。 「…………おや?」 ところがどっこい。 僕が座るべきはずの新入生ゾーン最前列左端には、先客がいた。 女子生徒だ。サイドの髪が長く、何だか睫が異様に長いことだけが確認できた。 とりあえずあのあたりが僕の席であることは確実なので、歩み寄り彼女の横の、則ちNo.2のパイプ椅子の上に目を落とす。 『愛川織 223002』 確かに僕の名前だ。 この横の数字は学生番号だろうか。となると末尾の『2』が新入生全体の番号になる。 ということは彼女がやはり1番なのか。 「………………」 くだらない敗北感が芽生えた瞬間だった。  
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