夏の前の日

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『好きです。大滝さんが……好きです』 その言葉に車内は沈黙に包まれた。 『俺みたいなオジサンのどこがいいの?』 『ずっと憧れてたんです……』 消え入りそうな声で答え俯いた千華(ちか)の言葉に、大滝は何も言わず夕陽が差し込む車内は重苦しい沈黙が訪れていた。 やっぱり迷惑だった。 そう後悔するがもう遅い。 俯いた視線の先、膝の上でギュッと握りしめた手が浮かんできた涙で滲んだ。 するとその時、千華を照らしていた夕陽がかげり視界がスッと暗くなった。 なにかと思い顔を上げた千華は大滝に唇を塞がれた。 突然のことに目を閉じることを忘れていると、すぐに唇が離れる。 『こんな俺でいいの?』 夕陽をバックに大滝が言う。 千華が無言でうなづくと、逆光で暗かく顔がはっきりと見えなかった大滝彼が微笑んだように見えた。 そして再び顔が近づき千華がそっと瞳を閉じると、さっきと同じ様な優しいキスが降ってきた。 数分後、大滝は静かに車をスタートさせた。
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