夏の日

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驚いて隣を見ると男性が微笑んでいる。 「俺もカズヤって名前なんだ。偶然だね」 そう言ってまた笑った。 「すごい偶然」 こんな時だというのに千華は一緒になって笑っていた。 そして男性は微笑みながら頬をスッと撫でてきた。その手つきにゾクッとし緊張の眼差しを男性に向ける。 「……やっぱり思ってた通りだ。笑うとスゲー可愛い」 そう言って満面の笑みにを見せた後、急に真剣な顔になった。 「君が好きになりそうだ」 言われてドキッとし、今頃になって見知らぬ男性に着いてきてしまったことを後悔していた。 しかしそれはあまりにも遅すぎ、動揺した千華の体が固まり言葉が出ずにいた。 そして彼の顔が近づいてきた。 「いやっ」 思いっきり手を伸ばし彼の胸を突き飛ばしてしまった。 「旦那さんも君のその笑顔に惹かれたのかもしれないね」 彼はそう笑い店の前で手を振って別れた。 そして少し歩き振り返ったが男性姿はもうなかった……。
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