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空が白み始めた頃、千華は自分達の部屋を見上げていた。
楽しかった日々、ケンカして泣いた日。毎日幸せだった。
『離婚しよう』の言葉を聞いたのもあの部屋。
今日もいつもと変わらぬ朝がやって来たが、いつもと違うのは千華と大滝の二人だけ……。
そんな気持ちで千華がリビングに行くと、ソファーに項垂れ座っていた大滝が顔をあげ、千華は無言でリビングを出ようとした。
「俺……」
大滝の声に千華の体がびくついた。
「……俺なりに一晩考えた。このままでいいのかって……」
千華はドアに手をかけ大滝に背を向けたまま立ち止まって話を聞いた。
「千華さんの望みをどうしても叶えさせてあげたかった。辛かったのは俺だけじゃないって分かってたのに……。八つ当たりして、泣かせて。悲しませることばっかりしてた。俺はこんな小さな男なんだ。だから千華さんには相応しくない……」
千華は黙って大滝の言葉を聞いている。
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