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ライトアップされ、冷気を吹き飛ばす程の喧騒に包まれた街。
見渡す限りのカップル。
キラキラとしたイルミネーションで覆われたクリスマスツリー。
「ねえ、紅音[アカネ]くん。今日は楽しかった?」
ツリーを見上げ、呆けていると、斜め下から声がかけられる。
そちらに目を向けると、笑顔を浮かべてこちらを見る少女、『東雲[シノノメ]紗弥[サヤ]』。
白の毛糸で編まれたマフラーとニット帽で半分隠れている顔は、寒さのせいか赤く上気している。
童顔な彼女の瞳は、吸い込まれそうなほど綺麗な黒。
白い防寒具で身を覆った小柄な身長の彼女は、雪ん子のような愛らしさで、俺を魅了する。
「ん、あぁ。冬はこたつに蜜柑がベストだと思っていたが、こういうのも趣があるな」
「へっへーん、凄いでしょ~」
「あーうん、そうだなー」
「棒読みは酷いよ、紅音君」
「はっはっはー」
何処となくドヤ顔をする彼女を軽くあしらうと、頬を膨らませて、拗ねたふりをする。
膨らんだ頬が、さながら林檎のようで、そのあどけない表情に心を奪われそうになる。
愛らしい彼女の仕草に、庇護欲が刺激され、思わず子供を相手にするような言動になってしまう。
(全く……惚れた弱みだな……)
頭を撫でながら微笑むと、彼女は顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにする。
しばらく撫でてから解放すると、恨めしそうな目をしながらこちらを見上げる。
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