Episode00-1

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「紗弥!」 猛スピードで走る車が、彼女目掛けて走ってくる。 ヘッドライトの閃光に晒されている筈の彼女を無視して、スピードを緩める事なく車が走ってくる。 彼女が車に撥ねられるという最悪のヴィジョンが脳内に映る。 パニックで体が硬直しているのか、身動きをしない彼女の手を掴み、彼女の手を引く力を利用して自分と彼女の位置を入れ換える。 驚愕の表情を浮かべる彼女。 そのまま彼女をトンっと歩道の奥へ突き飛ばした直後。 ……ドンッ… 全身に衝撃が走り、俺は鈍い音とともに吹き飛ぶ。 程なくして再び全身に衝撃が走り、地面に落下したことを知る。 「紅音君!」 遠くで彼女の泣きそうな声が聞こえる。 何度も何度も叫ぶ彼女の声が聞こえる。 ふと、隣に気配を感じて、いつの間にか閉じられていた目を開ける。 「う………紗……弥…」 泣きそうな顔をしながら、彼女は俺の顔を覗き込む。 「怪我………無いか?」 安心させるように微笑むと、彼女は怒鳴る。 「何言ってるの!紅音君の方が…」 「大……丈……夫……。少し……寝たら……治る…」 治る筈が無い。 呼吸がし難く、腰から下の感覚が無い。 即死していないのが奇跡的だろう。 彼女もわかっているのだろう、目から涙がこぼれている。 「泣くな……紗弥…」 「だって……紅音……君…」 「お前が泣いてたら……騒がしくて……寝れない……だろ…」
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