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俺は今、静まり返った昼下がりの教室にいる。
でもって目の前には、伏し目がちに座る、俺のクラスメイトな黒髪の少女――桐谷 冬花(きりや とうか)が。
『なぜコイツがこんな至近距離に居るか』
と聞かれれば、俺には
『分からん』
と答えるしかない。
コイツとはクラスメイトとは言っても、今年同じクラスになってから、まともに顔を見たのも、きっとこれが初めてだ。
しかしアレだな。こうして近くで見ると、コイツは結構――いや、かなりの美人だったんだな。睫毛すげぇ長げぇし。
涼しげな表情で、色白で……
うん。冬の花ってのは、実ににぴったりな名前だな。
これはひょっとすると、本人非公認のファンクラブが密かに結成されたって噂も、あながち嘘でも無いのかも知れんな。
まぁ、だからって俺は興味も無いし、こんな状況だからって嬉しくも無い。
だってコイツってば、性格がチョイとばかし冷た過ぎるんだよ……特に俺に対しては。
挨拶してもスルーだし、落とした消しゴム拾ってやっても『ありがとう』の一言も無いし……
俺はもっとこう、女の子らしい可愛いげのある、普通の娘が好きなのだよ。こう、笑顔が可愛い感じのさ。
じゃあ何でこんな桐谷と二人っきりで教室に居るかって言うと、話は少し前にさかのぼる。
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