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退屈極まりない終業式が終わり、俺が鼻歌まじりに帰り支度をしていると
「待って」
と、背後から俺を呼び止める女子の声が。
その聞き覚えのある無愛想な声に、嫌な予感を募らせながら振り返る。
そこに居たのは案の定、これまた無愛想な態度の、我がクラスの委員長であらせられるところの、桐谷 冬花(きりや とうか)その人だった。
正直、俺はコイツが嫌い……までは行かないが、かなり苦手だ。
コイツが話し掛けてくる時は、決まって俺の補習絡みで連絡がある時だけ。
それにコイツは俺に冷たい。って言うか、あからさまに俺を避けている節がある。
現に今も顔を背けて、ろくにコッチを見もしない。お陰で、入学してから一度もコイツの顔をまともに見た記憶がない程だ。
これじゃ、誰だって苦手意識の一つや二つ芽生えるってもんだろ。
けど、今日は何だって俺に話し掛けて来たんだ?
俺はこの日を無事に迎える為に、ぬかり無く全力で補習の類は回避したのだ。このタイミングで桐谷に声を賭けられる覚えはない。
そんな事を考えながら、改めて桐谷を見てみると、桐谷は俺に差し出すようにした右手に、二つ折にされた
紙を持っていた。
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