恋の詩

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  「……その紙って、俺に?」  顔を背けたまま、コクンと頷く桐谷。  なんだこれ。なんかちょっとアレな雰囲気じゃないのかこれはっ! こいつぁ何のイベントだぁ!?  って、いや待て落ち着け俺! ここは慌てず騒がず状況を整理するんだ……  まずこの状況で一番確率の高いのは、課題やら補習関連の連絡だが、各担当教師に確認したから大丈夫。これは無い。  となると話は簡単だ。  12月24日のクリスマスイヴに、女子から男子へと渡される紙ってぇと、それはつまり――マジか!?  って事はだ。問題は、これが誰からかって事になるんだが……  恐る恐る手を伸ばし、桃色に見え始めた白い紙を受け取った。 「な、なぁ、これってさ。ここで見ちゃっても良いのか?」 「うん。見ていい」  チラリと俺を見て答える桐谷。  その返事と仕種で確信した。  なんでかは知らんが、これは桐谷からの告白が書かれた手紙なのだ。  いやはや、今時ラブレターだなんてとも思うが、封筒にも入れずに裸紙ってのが桐谷らしいと言うか何と言うか。  こうなってみると、コイツの素っ気ない態度も可愛く見えて来るから不思議なもんだな。   「早く見て」  おっと、急かされちまったぜ。  桐谷には残念だろうが、俺の答えは手紙を読むまでも無くすでに決まっている。だが、それでもせっかく書いてくれたんだ。一応読むのがモテる男のマナーだろう。  人生初の、リアル告白イベントに気分をよくしながら手紙を開いた。 「悪いな桐谷。気持ちは嬉しいが…………あれ?」  ナンダコレ。妙に古風な言葉づかいだ、な……?
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