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しかし、まるで反応が無い。
「起きて~朝だ~いやもう昼だ~~」
まるで反応がない彼女の頭を上下左右にシェイクシェイクすると、
「あぁ~! 分かった! 分かった! 起きる! 起きるから!」
流石は最強の吸血鬼。たとえ頭だけになってもしぶとく生きているらしく、もし手足が在れば動かして暴れていると思う感じで、シェイクの中止を求める。
その懇願に対し、シェイクを止めると、若干目が回っているらしく目が定まっていないがその表情は怒りと同時に動揺も感じ取れた。
「理由は2つ。1つは自分の呪いが溶けているにしては未だに魔力の安定感がない。もう1つは前に魔界で戦った吸血鬼は頭だけで村を1つ襲って見事復活していたことがあった……最強って付く吸血鬼なら生きてそうだなぁ~と」
さっきまで喋っていた笑顔と雰囲気のまま話し始める弓兵。それに対し吸血鬼は、
「ふん! 当たり前だ! あのままほおっておけば夜にお前の首に噛みつきに行ってやったのに! まさかばれてしまうとはな!」
お前なんかいつでも倒せたんだからな! とでも言いたげな表情で自慢げに話す彼女ではあったが、
「いや、嘘だし。魔力安定とかそんなの解んないし、吸血鬼も首だけになったら流石に何も出来ずに魔物に喰われてたし」
「……そうなの……?」
どうやら鎌をかけただけらしく、その情報に騙されたのが分かり、彼女の顔が赤くなる。
「ぶっちゃけ、もう死にかけでしょ。その証拠に周りの手足がすでに消滅してる。吸血鬼って死に方が特徴的だったからよく覚えてるんだ」
吸血鬼の不死性の秘密は魔力と血に関係があり、これが両方尽きると例えどれだけ不死身でも死に至る。
彼はそのことを知っていた。
「な、なんなんだ! このボクをどうする気だ! なんだ! たとえなにをされようとボクはお前なんかに屈しないからな! 奴隷!」
顔が真っ赤のままではあるものの、持っているプライドだけは一流らしく、最後まで減らず口を叩く吸血鬼。
「まぁ……ある意味お前のプライドに反することかもな」
弓兵は困ったような笑顔を見せながら、彼女の頭を自らの首筋に持っていく。
「……これは何の真似だ? ほら? お前の血と魔力残らず吸い尽くしてしまえるぞ?」
驚いた……と言うより、あまりにも愚かな行動に多少あざ笑うかのような声色と表情である。
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