最弱の弓兵と最強の吸血鬼

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 見渡す限りの草原。  馬車が走るために整備された道は一本道になっており、「とある村」への道標を兼ねている。  天気は雲ひとつ無い晴天。  その道を歩く、田舎臭い青年は眠そうな顔をしながら大きく欠伸をした。 「……眠い」  丸坊主の髪を掻きながら、呟いた一言は彼の良く言えば優しそう、悪く言えば締まらない雰囲気を醸し出す彼にぴったりの言葉である。 「いい天気だなぁ……」  そう言い空を見上げた彼は、たすき掛けされた筒の中身から乾いた音を静かに鳴らし、空を飛んでいる小鳥を見つめる。  その目は細く、締まらない表情をしている。 「……美味しそう」  それと同時にお腹から間抜けな音が鳴る。  平和を体現したような自然を満喫できる性格らしく、20代位の青年らしくない、まるで年寄りのような時間の取り方を楽しむ。 「……歩きながら寝るって出来るのかな?……」  すでに閉じているようにしか見えない細い目をゆっくりと閉じ、風の音、鳥の囁き、暖かい太陽……様々な自然を体いっぱいに取り込む。  澄んだ空気を吸い込むため小さな体に似合わぬ逞しい胸筋を、膨らませていく…… 「食い物ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」 「え?どこに――」  ハスキーな女性の声がした時には、彼は既にクレーターの中心に居た。 「いただきま~す!!!!!!」  限界を感じる声を張らせながら彼に激突し、馬乗りのまま鋭い八重歯を彼の首に突き立てる。  黙々と彼の「血」を吸い、一滴残らず吸い尽くそうとする彼女の様子は、先ほどまで平和を体現していた場を血なまぐさい地獄に変えるのはそう難しくなかった。 「っぷは! 美味しいな! 君の血は! ついでにボクの奴隷してやる感謝しろ!」 「……な、何を言って……!」  彼女が吸血を止めた時、血が無く朦朧とする意識の中、必死に抵抗を試みたが、まるで悪魔のような羽を生やした彼女はすぐさまその首に吸い付き喋らせない。 「はんひゃひんさい、あなひゃのひのひはほらなひは」  薄れゆく意識の中、首に吸い付きながら話す彼女の言葉も理解できないまま彼の心は次第に沈んでいった。 バッドエンド31「天国から地獄」 冗談です。
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