166人が本棚に入れています
本棚に追加
「さて、こんな人界の地に居る魔人さんはとっとと魔界に帰ってもらおうかしら!」
「やり過ぎないように……と言うか自分も援護するから存分に戦ってくれていいよ」
大分遠くに行ったであろう吸血鬼に対し、油断はせず、ツインテールを揺らせて長棒を体の周りで回し、その先を居るであろう吸血鬼に向ける。
最弱の弓兵もその手に赤と青の色がが半分に分かれて魔力お手製の弓を召喚する。
その弓を砂煙の奥に居ると思われる相手に向け、じっくりと弓を引いていく。
引いていく途中、弓と弦の間には火を思わせる赤い矢、氷を思わせる青い矢が2本、つがえられている。
そして放つ。相手を囲むように広がって放たれた2本の矢と同時にチャイナドレスの女性はその中心を砂煙向かって走る。
「っは!不意打ちなんて言い趣味してるじゃないか! ただの人間風情――」
「はぁぁぁ!!!」
砂煙を一瞬で吹き飛ばす魔力放出、それにより先ほどと違い髪型が短髪からツインドリルに、羽はより大きく、尻尾は悪魔の尻尾になり、赤黒いオーラが見える。
その彼女が口上を述べているがお構いなし。放った矢は魔力放出された際全て消えるが、そんな魔力に負けじと青く長い髪をたなびかせ、最速の突きを行う。
が、
「人間にしてはまぁやるほうだが、やはり非力だな人間の、しかも女となれば尚更だ」
「それはどうかしらぁ!?」
魔力障壁でその長棒の先を止めた吸血鬼に言葉の最後に気合を込めると同時に、長棒から一瞬手を離し、足、腰、胸、肩と高速で体を捻る。
その捻りの力を、長棒の先に右手の掌底で一気に押し込む。
「ぐぅ!」
何か砕けるような音を立てながら振りぬかれた渾身の一撃は、確実に吸血鬼を捉える。
ミリアと言われる女性の体に合わせて、彼女を包むように靡く2本の髪は美しく、とても吸血鬼を再び吹っ飛ばした破壊力を生み出した当人とは思えないほど可憐な体の動きを見せる。
その吸血鬼追うようにまた再び2本の赤と青の矢は向かっていく。
しかし、その青の矢は届く前に溶ける様に消え、赤い矢は逆に命中するが……
「さっきからこの虫はなんだ! 最弱は引っ込んでろ!」
まるで同化するように彼女の体の中に入っていく矢を鬱陶しく感じた彼女は怒りを赤く光る眼で表現する。
それは、人間の女ごときに力負けをした自分自身への怒りも見て取れる。
最初のコメントを投稿しよう!