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「ポイント21-16
ゲームセットです」
「……」
試合に勝った喜びや安心感からか…
言葉がでなかった
私はもう十八番だが
女子では珍しいジャンプスマッシュを
あの最後の最後に
綺麗にきめれるとは思っても見なかったし…
まだ最後のダブルスがあるのに
本当に…
本当に嬉しくて
涙がでそうだ
「よくやったよ一希!」
「ありがとう
次の試合は任せて!」
最後のダブルスをする先輩二人が
目に涙を溜めて動かない私に駆け寄ってくる
「先輩…今喋ったら…涙でちゃいます…」
そう言って先輩を見た私の頬にはもう既に涙がこぼれていて
「そう言ってるそばから涙でてるくせに…
気が早いんだから」
「そうだよ
それが無駄になんないように次の試合…絶対勝つから
ほら…椅子に戻れる?」
優しく微笑む先輩二人に私は
コクリと頷くと
コートの後ろに並べてあるパイプ椅子に戻るため
足を一歩踏み出した
ズキンッ
「いっ…た」
足を挫いていたのをすっかり忘れていた
思った以上の激痛がはしり
ふらついて膝をつきそうになる
「…おっと、大丈夫か?」
そこに丁度試合を見に来ていた
男子の先輩が体を支えてくれていた
「一希、大丈夫?」
「吉川君、一希頼むよ」
もうコートに入っている先輩二人が気にかけてくれる
(心配させてる場合じゃないのに)
ちなみに吉川というのは今私に肩を貸してくれている男子部長のことで
掴まりながら歩き、パイプ椅子に腰掛ける
最後のダブルスはもう始まろうとしていた
監督は私の足の横に屈むと
「捻ったところ見るぞ」
と言い靴と靴下を脱がして
おもいっきりしかめ面をした
私の足首は真っ赤に腫れ上がっていたからだ
確かに痛い…
でも辛いものではない
こんな痛みなんて…全然
そんなことを考え出した私は首を横に振って考えをかき消す
まず監督に試合を観るのを専念してもらい
取り敢えず湿布を貼っておいて
すぐに私も最後のダブルスに目をやった
結果は見事勝つことができ
地区予選を突破したことになる
次は県大会に行けるので先輩の引退までの時間が少し伸びた
だが個人戦にシングルスにでる筈だったが足を挫いてしまっていたので無念の欠場
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