1章

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何故、人を殺してはいけないんだろうか―… 僕は今、切実に疑問に思う。 殺したい人? ああ、あんな奴の事を考えたくもないけれど、みんなのために紹介しよう。 あの煩くて不潔な見た目で頭がマリモな転校生―…京野葵。 裏口入学と噂され、学校の備品を壊した回数は転校してきてから2週間しか経っていないのに、軽く二桁はいく。そのため生徒会である僕の仕事量は彼が来てからというもの右肩上がりだ。まあ仕事が増えているのは彼のせいだけでは無いのだけれど…それは置いておこう。 ああ…忘れもしない、桜の季節も終わった時期外れな転校生を理事長からの命でわざわざ迎えに行き、挨拶を笑顔を作って述べた僕に向かって放たれた不快な言葉。 『お前の笑顔気持ち悪いぞ!作った笑顔なんてお前らしくない!本当の笑顔の方が絶対にいい!』 …というようなこと、そして他にも何かを喚いていたが、正直何も聞いていない。というか、耳がキンキンしていて聞く気も失せた。 初対面の人、しかも上級生にそんな事を言える神経が分からない。というか当然の如くタメ口だったのにも腹が立つ。理事長室までそのまま案内した過去の自分に拍手ものだ。 そんな宇宙人思考を持つマリモは、何故か様々な人物たちを虜にしている。正直あんな生物の良さが全く分からない。 現在分かっている範囲だと期待のバスケ部のエース、一匹狼の不良、更には担任のホスト教師。そして非常にやっかいなことに僕の幼なじみたちである生徒会役員をも虜にしている。 要はピュアでも何でもない生徒会役員は、マリモに『恋』をしてしまったのだ。
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