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店の外では、休業の看板を見て残念がる声が聞こえてくる。
「お店開けちゃいましょうか? 今日はただですよー、って」
「ダ、ダメですよ、あなたにだけ特別なんですから」
「ん? なんであたしにだけ?」
「なんで……って……、なんでですかね? ……僕にもかりません」
それから数分後。
「はい、大変お待たせ致しました。カナメ特製オムライスでございます」
「カナメ? この店、かなでよね?」
「僕が作ったからですよ。僕、名前がカナメなんで」
「なるほど~、では、いただきます!!」
彼女が一口食べる。
「ん~、あれ? 美味しいじゃん! これ! うん、うん、美味しい!」
「良かったぁー、じゃ、僕もご一緒していいですか?」
「えっ? なに? あたしは毒味役?」
ふたりはカウンターに並んで、オムライスを完食した。
「こんなに美味しいのに半人前なの?」
「師匠のOKが出ない限りお客様には出せません」
「そっか……、なかなか厳しいのね。ご馳走さま! なんか100円くらい払わないと申し訳ないくらい」
「100円の価値ですかぁ……」
「冗談よ、美味しかったわよ。冗談抜きで。ありがとう」
彼女はニコッと微笑んだ。
うわ! メッチャかわいい!!
「あの……、明日も来てください。僕待ってますから」
「ほんと? じゃ、また来ようかな?」
よっしゃ! 明日も作るぞ! オムライス!
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