レストラン【奏-かなで-】

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 ここはシェフが経営するレストラン【奏-かなで-】  鳴瀬カナメは見習いシェフ兼ウェイターとして働いていた。まだお昼前だが、数人のお客様がテーブル席で食事をしている。そこへ女性が一人で来店し、カウンター席の一番奥に座った。 「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりになりましたら……」 「あ、ランチとかあるんだったら、それお願いします」  彼女は、カナメが喋り終わる前に注文した。 「かしこまりました。ランチは日替わりになっておりまして、本日のメニューは……」 「あたし、好き嫌い無いからダイジョブだから」  またしてもカナメが伝える前に言い放った。しかも、彼女はメニューどころか、カナメの顔さえ見ず、ノートを取り出し、すでに何かを書き始めていた。  それから彼女は毎日11時45分頃に来店し、12時20分近くに店を出て行く。そして、1週間空けて、また1週間来店と言う不思議なお客様だった。  ある日、シェフの身内に不幸があり、どうしても二日間店を閉めなくてはならなくなった。 「カナメ、二日だけだが、まだ食材あるから、好きなだけ厨房使ってていいぞ」 「ありがとうございます! 有難く使わせていただきます」  そして木曜日、カナメは朝から仕込みをしていた。  11時30分を過ぎた。 《あの人、今日も来るかなー。お店休みなの知ったら、どこ行くんだろ……》  カナメは急いで店の脇に出ると、彼女が来るのを待っていた。予想どうり、彼女はやって来た。  店の前で足を止め『本日から二日間、店主の都合により休業とさせて頂きます。又のご来店を心よりお待ちしております』と書かれた看板を復唱すると、困ったなぁ~、と辺りを見回す。  カナメは店の前に出て行くと、思いきって話しかけてみた。  
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