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「あ……、あの……」
「はいっ?」
「こ、この店で働いてる者です」
「あっ……。普段着だからわからなかったわ。今日お休みなのね。どうしよ、どっかないかな? あたし、この辺だと、ここしか知らないのよね……」
「あの……、もし良かったら、僕、作りますから、食べて行きませんか?」
「えっ! ……」
「あ、も、もちろん、お代は頂きません! まだ修業中ですから」
「いいんですか? あまり時間もないので、そうして頂けるとありがたい。 じゃぁ、お願いしてもいいかな?」
「ありがとうございます! こちらからどうぞ」
勝手口から店内に通すと、彼女はためらいもなくカウンター席に座った。
カナメは急いで着替えて準備を始める。
彼女はカウンター越しから厨房を覗いていた。
「やっぱ半人前の仕事は気になりますか?」
「あ、ごめんなさい。そうゆうわけでもないんだけど、なんとなく……」
そう言って笑った。
わっ! 笑顔が超かわいい。カナメは初めて彼女の笑う顔を見てキュンとなってしまった。
「きょ、今日は書き物とか、しないんですか?」
「あぁ……、なんか、お店なのに、他に人がいないって、落ち着かないもんよね。ザワザワしてた方が頭の中が働くみたい。変かな?」
「いえ、いえ、僕もどちらかって言うとそっち寄りなんでわかります」
「でしょう! だから今はちょっと止めときます。……そういえば……、あなたのこと、ちゃんと見たの今日が初めてな気がするけど、意外と若かったのね」
「意外と……ですか? かなり若いんですけど」
「あら、失礼しました。じゃあ、まだ15くらいかしら?」
彼女はからかって来た。カナメも、まぁ遠くないですね、と返す。
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